ICCT(国際クリーン交通委員会)から、
NOX control technologies for Euro 6 Diesel passenger cars(ユーロ6ディーゼル乗用車のためのNOx制御技術)というレポートが出ていました。面白かったので備忘的に要点を纏めておきたいと思います。
排ガス制御技術には4種類ある
下表は、主なNOx低減技術の一覧です。左から、LNT、SCR、EGR、SCR+LNTとなっています。
LNT、SCRは後処理装置を用いてNOxを除去するもの、EGRは排気の一部を吸気に再循環させてNOxの発生を抑制するものです。通常、LNT、SCRはEGRと組み合わせて使用されます。
マツダのSKYACTIV-Dは低圧縮比と大量EGRのおかげで、後処理装置なし(EGRのみ)のシステムとなっています。EGRのみのシステムは、LNT、SCR方式と比べてコストが1台あたり$20~$30程度安いようです。
ユーロ6ディーゼル車に占めるマツダのシェアは6%
下表はアメリカとEUにおける環境基準(Tier2、EURO6)適合車の市場シェアです。マツダはアメリカではディーゼル車を販売していないので0%ですが、EUでは7%ということで、ボルボの6%を上回る水準にあります。
マツダだけ異常に高いユーロ6対応車比率
既存車種については、古い環境基準の車を販売できるので、マツダ以外のメーカーは、2014年でもEURO5対応車種(紫色)が大半を占めます。一方、マツダは新型車を続々投入しており、それが軒並みEURO6対応ですので、9割異常がEURO6対応(青色)となっています。
EURO6対応車で後処理装置が必要ないのはマツダ車だけ
上段をみると、マツダだけグラフが紫(EGR)です。これは、後処理装置が必要ないEURO6適合車はマツダ車のみということを意味します。
下段は排ガス測定モードごとのNOx排出量で、青棒がヨーロッパで現在採用されている「NEDCモード」、橙棒がヨーロッパ・日本で採用予定でより実走行に近い「WLTCモード」、赤線がEURO6基準値です。NEDCでは全車が基準値を下回っていますが、WLTCモードでは各方式とも平均値をみると、SCR、EGR、LNTの順にNOx排出量が多くなっており、いずれも基準値を上回っています。
マツダ車のNEDCモードとWLTCモードの乖離は「標準的」
上段は方式別、中段は車格別、下段はメーカー別のNEDCモードとWLTCモードとの乖離です。グラフが左側にあるほど、乖離が少ないことを意味します。上段の紫丸(EGR)および下段の薄緑丸(MZD)がマツダ車で、「average(平均的)」という評価になっています。
LNT車の一部は非常にパフォーマンスが悪く、「RDE(今後導入予定の実走行テスト)には適合しないと思われる」と評価されています。
マツダ車は他方式と同じく高速時のNOx排出量が多い
左側がWLTCモード、右側がNEDCモードで、それぞれ測定フェーズごとのNOx排出量です。紫色(EGR)がマツダ車ですが、他方式と同様にと高速になるにつれてNOx排出量が増えています。
※High-Speed:80-100km/h程度、Extra-high-speed:100-125km/h程度。
まとめ
他方式よりコストが安いEGRのみでNEDCモードをクリアできているのは驚異的ですね。また、
こちらの記事によると、マツダはEGRのみで米国の排ガス基準をクリアすることを目的としているようですので、更なる排出量の改善余地があるようです。
今後、規制値がどうなるかは明らかになっていませんが、WLTCモードへの切り替え、RDE(実走行テストの導入)などでEURO6が厳しくなっても、他社よりも低コストなディーゼル車を販売できることは間違いなさそうです。